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医研について

設立趣意書

医療が人々の「健康維持、疾病、傷害からの自由」をはかるためのサービスとするならば、医療は市民の基本的権利に深くかかわるものである。幸い我が国の医療水準は、平均寿命の高さや、乳児死亡率の低さに示されているように、今日、世界最高のレベルに達しているが、今日享受しているこの高度の医療こそは、 われわれが今世紀に獲得した「最大の資産」であろう。

しかしながら昨今、人口の高齢化、疾病構造の変化、さらには不断の医療技術の高度化に伴い、国民医療費は国民所得の伸びを上回って上昇している。これから更に進む高齢化社会は、医療需要の増大、医療費の急上昇をもたらすこととなり、有限な医療資源と際限なく増大する需要とのはざまにたってわれわれは重大な解決を迫られている。

本来、生命の尊厳にかかわる医療には経済性に左右されぬ最高の価値が認められるべきである。しかしながら医療資源は有限であり、この資源が課す制約の中で実際の医療が行われる以上、その課題を解くには経済的効率の尺度が導入されざるをえないことになろう。

これから将来に向かって医療と経済の調和、需給の長期的安定を目指して、広く社会の英知を結集し、社会の合意として新しい時代の解答を出してゆくべきものと考える。「医療科学研究所」はこの社会の英知を表明する場としての役割を果たそうとするものである。

かつて厚生省の医薬品産業政策懇談会は、医薬品産業を省資源・知識集約型産業として位置づけ、技術立国を目指す我が国を代表する産業として一層の研究開発努力を要請していた。

こうした産業政策的視点からの要請に加え、医療の効率化に寄与するためにも我が国の製薬企業は開発志向型企業としての発展が期待され、そのための戦略的・経営的側面の研究が重要な課題となっている。このことと関連して、医薬品卸売業も医療の効率化の発展に果たしている役割についても適正に評価しなければならないであろう。
当研究所が設立目的の一つに医薬品の研究開発・生産・流通に関する調査及び研究をかかげる理由である。

我が国において、医療に関する経済学的調査研究の必要性が益々高まる情勢にあるものの、この分野についての研究体制が十分であるとはいえず、これを何らかの形で充足することが社会的に要請されている。当研究所がその要請に応えるべく医療経済研究者を育成する役割の一端を担うものである。

加えて、研究者の研究の一助として研究助成を行い、医療とその関連諸科学の学際的研究の奨励に寄与せんとするものである。

近年、目覚ましく発展する医療技術が実際に適用されることからくる新たな倫理上の問題が注目を浴びている。人工授精、臓器移植、延命医療など、医療技術の進歩は、医療の持つ可能性を広げることに貢献しているが、これが真の人間の福祉に結びつくのかどうかは、新たな倫理観の確立と社会的合意をまって判断しなければならないであろう。このことが生命倫理への強い関心が寄せられるゆえんである。

ここにエーザイ株式会社が創業50周年を記念して財団法人医療科学研究所を設立し、医療に関する社会科学的、人文科学的な諸研究を未来にわたる人間の健康な生存と福祉の向上を目指す礎石として、長期的・国際的な視野に立ってこれらの研究の促進に取り組まんとするものである。

当財団の事業が新しい時代への指針を示すことができれば発起人一同の喜びは、この上もないところである。

平成2年8月30日

設立発起人 森 亘
片岡 一郎
内藤 祐次
内藤 晴夫
設立年月日 平成2年10月1日
主務官庁 厚生省