医療経済・経営、医療政策、社会保障政策をはじめ広く医療に関する経済学的調査研究、学際的調査研究を行う若手研究者を対象に、毎年公募により優れた研究計画に対して研究助成を行い、研究活動を支援しています。
2007(平成19)年度は、全国の教育・研究機関282施設に募集要項を送付し、71件の応募をいただきました。2008(平成20)年2月4日に、選考委員会を開催し、慎重、公正に71件を審査し、10件を研究助成の対象として採択し、受領者各々に50万円を贈呈しました。
「平成19年度医療科学研究所研究助成の審査を終えて」
選考委員長として今年度の審査を振り返り,個人として,以下,講評と感想を申し上げます。
本研究助成も17年目となり,これまで多数の研究を助成してきた。助成を受けた研究が成果をあげ,日本における医療科学の研究の裾野を広げ,大きな貢献をしてきたことを高く評価したい。また,実際に研究助成に応募し,研究を行ってきた方々,さらに研究助成を支えてきた方々に,敬意を申し上げたい。
本研究助成は年度の末に開始され,支出期間,範囲ともに比較的柔軟であることから,本研究助成には毎年多数の応募がある。本年度の応募件数は71件あり,その中から10件の助成対象を選択するという極めて倍率の高い選考であった。応募研究はいずれも重要な課題に取り組むものであり,興味深いものであった。研究課題は医療,看護,経営,政策等の多様な実務に及び,また,研究領域も医学,看護学,経済学,経営学,政策論,法学,歴史学,倫理学等にわたる。さらに,研究手法も,統計分析,アンケート調査,インタビュー調査,観察調査,実験調査,質的研究,制度比較分析等のように多彩である。審査においてはこのような多様性をどのような基準で評価するかに配慮した。
多様な評価尺度を集計した評価では申請研究間の格差は逆に小さくなる傾向がある。このため,申請書において,研究課題,研究内容,研究方法等が的確に記述されているかが,採択・不採択につながりやすい。この点,以下の留意が必要である。第1に,既存の研究でどこまで明らかにされていて,何が解決されてなく,申請研究によってどこまで明らかにするかについては注意して記述していただきたい。第2は,研究が大規模な研究の一環としてなされる場合には,大規模な研究と,本助成対象の研究との関連を明らかにしなければならない。第3に,研究が,申請者の職業,実務の一環と密接に関係する場合が多いが,このとき申請者は自分の実務と研究とを独立させて,いかに研究成果の一般性を確保するかが問われる。第4に,研究方法については簡潔で具体的な説明が必要である。どのような研究手法を使用して,どのサンプルを対象に,いかなる手続きで分析するか等は的確な記述が曖昧な場合が多く見られた。申請書について個別の指摘はできないものの,指導教員,共同研究者,同僚研究者等による評価を事前に経ることで回避できる問題は多いと思われる。
さらに付け加えれば,本研究助成は,純然たる医学研究,薬学研究,疫学研究については助成対象外と判断されることがある。助成対象は広く解釈し,一律の基準によって範囲を限定するものではないが,申請者はこの点について留意していただきたい。また,同様に,独創的,萌芽的研究が重視されるため,研究の完成度は高くとも,既存研究の延長とみなされるような場合は評価が必ずしも高くならない。さらに実証研究が望ましいとされるため,純然たる理論的研究も評価においては不利となる傾向がある。
今後も,本研究助成の機動性,柔軟性を活かした多様な研究を望みたい。
平成20年3月1日 選考委員長 姉川知史