公益財団法人 医療科学研究所

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PROJECTS医研の事業

健康の社会的決定要因(SDH)に関する国内外の調査研究動向プロジェクト(2013-2014年度)

プロジェクトのねらいと概要

健康は、生物学的メカニズムや個人的行動だけでなく、医療サービスの供給とその財源調達などに影響を受ける。さらに、それは、医療へのアクセスだけでなく、人々の育ち方や職場における地位といった社会的要因によっても決定されている。このような健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health、以下SDH)は、教育や所得再分配をはじめとする社会の基本的な仕組みに関わってくる。

SDHの発想は、深刻な健康格差によって、多くの苦しんでいる人々を生み出している社会の実態を科学的に解明し、実効性のある解決策を提示できる可能性を秘めている。それゆえに、SDHは、学術的探究対象にとどまらず、政策・実践的にも国内外で注目されている。SDH研究に関わる学術分野では、経済学、社会学、社会疫学、公衆衛生学、公共哲学、社会政策など多岐に渡り、そして、SDHの知見に立脚した健康格差縮小に関する政策・実践の実施主体の幅も国際機関から基礎自治体まで広がりがある。

さらにSDH研究を推進させて、それを社会制度に応用していくためには、学際的研究や学術・政策・実践の共同作業が不可欠である。その際には、SDHに関わる様々なアクターが、それぞれの蓄積を互いに理解し学ばなくてはならない。

しかしながら、このような領域横断的営みを可能とする共通基盤が十分に整備されているとは言い難い。とりわけ、我が国は、SDHに関する海外の学術研究の厚みやWHOの取り組み等に比べて、一部の例外があるものの、研究・政策対応・実践的試みのいずれも大幅に遅れている。

このような共通基盤を整備するため、研究目的は、各主体が異なる前提・意図・文脈のもとで研究・言及しているSDH概念の歴史的・理論的背景を整理して、その核となる情報を抽出・構造化して、誰もがアクセスできる形で公開していくことである。

2013年度は、学術的にも政策的・実践的にも議論の共通基盤が強く待望されているソーシャル・キャピタルについて、幅広い学術領域と政策・実践動向をレビューした。

2014年度は,「SDHの発想に基づく健康格差を縮小するための理念・情報・課題の共有の必要性」や「健康格差対策には特定部門に限定されない多部門間連携が必須」など健康格差対策の原則を検討した。

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