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シンポジウム

医研シンポジウム 第21回シンポジウム
医療・介護の連携と機能分担
―診療報酬、介護報酬の同時改定は何を目指すべきか―
 

シンポジウムの様子

シンポジウムの様子

21 回目となる医療科学研究所シンポジウムは、平成24年度に行われる診療報酬と介護報酬の同時改定を前に、遠藤久夫座長のもと、行政、慢性期医療、リハビリテーション医療、訪問看護、ケアマネージャー、介護保険に詳しい有識者という、異なる立場から6名ものキーパーソンをシンポジストとしてお招きし、同時改定という足元の議論だけでなく、医療・介護の中長期的な視点からの熱い議論が展開されました。
事務局編集による座長基調講演および各シンポジストの講演内容の要約は、次の通りです。

開催概要

日 時
平成23年10月21日(金)13:30〜17:30
会 場
東京国際フォーラム ホールB5
東京都千代田区丸の内3-5-1
主 催
公益財団法人 医療科学研究所
後 援
厚生労働省

プログラム

13:30 開会挨拶 公益財団法人 医療科学研究所 理事長 森 亘
(代読:戸田 健二 専務理事)
13:40 来賓挨拶 厚生労働省 医政局 経済課長 鎌田 光明
13:50 座長基調講演 学習院大学 経済学部 教授/公益財団法人 医療科学研究所 評議員 遠藤 久夫
14:20 シンポジスト講演
(各20分)
厚生労働省 参事官(社会保障担当) 武田 俊彦
日本慢性期医療協会 会長 武久 洋三
全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会 会長 石川 誠
株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション 代表取締役・統括所長 秋山 正子
日本介護支援専門員協会 会長 木村 骼
淑徳大学 総合福祉学部 准教授 結城 康博
16:10 休憩    
16:35 総合討論    
17:15 座長まとめ    
17:25 閉会挨拶 公益財団法人 医療科学研究所 研究所長 嶋口 充輝

(敬称略)

座長基調講演

学習院大学経済学部教授/公益財団法人医療科学研究所評議員 遠藤久夫

医療・介護の連携と機能分担
─診療報酬、介護報酬の同時改定は何を目指すべきか─

学習院大学 経済学部 教授
公益財団法人 医療科学研究所 評議員
遠藤 久夫

今回の同時改定は診療報酬と介護報酬の整合性を図るだけでなく、医療と介護の連携と機能分担のありかたを改めて検討しようという動きにより、大きな関心を集めている。
平成23年6月にまとめられた社会保障・税一体改革案では「病院・病床機能の分化・強化と連携、地域間・診療科間の偏在の是正、予防対策の強化、在宅医療の充実等、地域包括ケアシステムの構築・ケアマネジメントの機能強化・居住系サービスの充実、施設のユニット化、重点化に伴うマンパワーの増強」を挙げている。
さらに9月に厚生労働省が診療報酬の基本方針を作成する社会保障審議会に対し提示した「次期改定に向けた背景及び論点等」の医療と介護の機能強化・連携に関する事項の例には次のことが挙げられている。

  1. 在宅医療を担う医療機関の役割分担や連携の評価
  2. 早期の在宅医療への移行、地域生活への復帰に向けた取組の評価
  3. 在宅での療養の質の向上に向けた在宅歯科、在宅薬剤管理の充実
  4. 退院直後等の医療ニーズの高い者への重点化等の訪問看護の充実
  5. 維持期のリハビリテーション等における医療・介護の円滑な連携
  6. 介護施設における医療提供の評価の在り方

今回の同時改定が大きくクローズアップされているのは、日本の高齢化、経済成長、財政状況などの要因により、医療と介護の連携に大きく足を踏み出さなければならないデッドラインと捉えられているゆえだろう。もちろん1回の改定で大きくシステムが変わることはあり得なく、その意味では今回の改定は2025年に向けた制度改革へのキックオフとの位置付けが適当であろう。

シンポジスト講演

厚生労働省参事官(社会保障担当) 武田俊彦

社会保障・税一体改革、同時改定と今後の医療介護連携

厚生労働省 政策統括官付 社会保障担当参事官 室長
武田 俊彦

社会保障・税一体改革は、医療・介護の将来像と改革案、それに向けての財源論が同時にまとめられている。今回の同時改定は2025年というひとつのゴールに向けた、医療・介護サービス充実強化の柱となっている。

人口増加率の地域格差、死亡数の増加、また死亡場所が自宅から病院中心に推移していることから、質の高いサービス提供体制の整備は喫緊の課題であるが、医療と介護という2つの保険、2つのサービス体系を患者の視点でシームレスなものにしていかなければ、今後の日本の医療・介護は多大な困難に直面する可能性がある。そこで、日常生活圏内において、医療・介護・予防・住まいが切れ目なく、継続的かつ一体的に提供される地域包括ケアシステムの確立、ならびに、小・中学校区レベル、人口20〜30万レベル、都道府県レベルに応じた医療・介護提供体制の整備を目指して取り組んでいくこととしている。
病院の機能分化については、入院基本料等の複雑な体系を見直し、求められる機能に即した体系に見直ししていくことが課題である。また、外来についても新たな機能をもった診療所のイメージが示されている。

在宅医療という観点では、在宅療養支援診療所および病院をいくつかのパターンに整理して推進していく。在宅医療連携拠点事業では「一堂に会する」ということが重要で、各地域での顔の見える関係の構築、情報共有のためのIT・ネットワーク化、医療・福祉分野の経験豊富なスタッフ配置といった三つの柱を中心に事業を考えた。これらは既にいくつかの地域で取り組みが始まっている。

こうしたネットワークの課題のほか、在宅医療には主体ごとの課題もある。在宅療養支援療養所の看取りの問題、在宅療養支援診療所医師の24時間体制への負担、訪問看護利用者数の頭打ち、訪問看護ナースの負担、在宅歯科・薬剤師および地域拠点としての薬局の問題などが挙げられる。また、重度の在宅要介護者には、短時間の繰り返し介護が必要なほか、医療と介護の複数のサービスを組み合わせて提供する必要が高い。
医療と介護の機能分化と連携については、これから11月、12月にかけて集中的な議論が行われる予定となっている。


日本慢性期医療協会会長 医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長 武久洋三

医療・介護の連携と機能分担

日本慢性期医療協会 会長
医療法人 平成博愛会博愛記念病院 理事長
武久 洋三

2025年には入院対象患者が慢性期医療の対象者を中心に300万人増加し、亡くなる方は1.5倍にもなる。つまり、亡くなるまでに2回以上入院する場合、入院患者数は3倍以上となり、ベッドを増やさないのであれば在院日数を現在の1/3にしなければならない。

一般病床と療養病床が分かれている現在の制度はその境界が曖昧で、一般が急性期、療養が慢性期という単純な区別は実際にはできない。急性期病院にいる必要のない慢性期の患者を慢性期病院に移したら医療費の削減が可能になる。慢性期への患者の移行も進んでいる今、慢性期病床を減らすという選択肢はないと考える。難病を含め慢性期医療の範囲は非常に広い。

患者が3倍ともなると病床は非常に貴重で、老健や特養でも医療サービスの提供が必要となる。特に老健は医療施設という表記を具現化する時期にきている。
高度急性期病院の平均在院日数は15〜16日だが、一般急性期では9 日という計画では、軽症の急性期患者の入院治療を想定しており、Post Acute患者の受け皿とは考えられていない。どうしても一般と療養に分かれている枠に無理に押し込もうとすることで実態とは乖離する。もはやこの病床の区分は機能として既に寿命を終えていると考える。急性期の定義でいう30日超の入院患者はすでに慢性期ではないか。

過去、急性期で30日だった入院期間は、近未来では10日となり、急性期病床で治療していた後半の2/3を慢性期病床で担うことになる。つまり、慢性期病床に急性期医療の機能をもった病院にしていかなければならない。

地域包括ケアシステムについては、在宅医療支援が不可欠。病床制限のない在宅療養後方病院が必要で、これは公私の別なく、連携先の医療機関からの依頼時のみ往診を行う。在宅死の増加については病院も含めて手付かずの状態である。在宅時に急性憎悪した場合は後方病院で検査・治療を行い、長く快適な在宅療養ができる仕組みをつくるのが望ましい。


全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会会長 石川 誠

医療・介護の連携と機能分担
─リハビリテーションの立場から─

全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会 会長
医療法人社団 輝生会 理事長
石川 誠

リハビリテーションは診療報酬と介護報酬の両方にあり、この10年間でたいへん激しく変化してきた分野。2000年に介護保険制度が施行され、同時に回復期リハ病棟入院料が創設されて以来、発症からリハの開始が明らかに早くなった。リハの場は訓練室から病院では病棟中心の時代になった。またPT、OT、STから医師、看護、介護、ソーシャルワーカーを含むチームで行うものとなり、現在は365日行われている。短い入院期間で可能な限り在宅復帰をする、この1点のためにこれだけの変化をした。しかし、これは医療保険のリハの話であり、問題は介護保険のリハにある。

急性期病院でもっとも重要なのは、ナースによる早期離床だが、7 対1看護では十分とはいえない。旗振り役となるリハ科の医師も急性期病院にはほとんどいないのも課題である。

回復期では、疾患別に単位数、自宅復帰率、平均入院日数、日常生活機能評価、ADL利得などで検証した場合、それぞれに課題を有している。別に回復期リハ病棟の調査により、重症者とスタッフの比率により自宅復帰率に大きな差があり、手厚い看護・介護体制があると自宅に帰れやすいことが分かった。そこで3段階の回復期リハを提案しているが、在宅復帰率7割以上を目指す「新1」区分では、手厚い看護・介護、専従医・社会福祉士・STも配置し、重症患者も積極的に取り込んでいく。
その後の生活期(維持期)では、居宅サービスで老健と病院がショートステイを敬遠している傾向がうかがえる。訪問リハでは都道府県別で最大10倍もの格差が問題となっている。通所リハの格差は4倍で、1〜2時間の利用者は1%にも満たない。

生活期リハには退院・退所直後のリハ、維持を目的としたリハ、改善を目的としたリハの3種類ある。退院・退所直後は医療保険と介護保険のつなぎの部分で、その併用期間は3か月に延長すべきである。維持目的リハは量的な基盤整備が必要。改善目的リハは集中的な訪問リハや短期入所集中リハの実施が望ましい。


株式会社ケアーズ白十字訪問看護ステーション代表取締役・統括所長 秋山正子

医療・介護の効果的な連携をはかるには?
─訪問看護からの提言─

株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション
代表取締役・統轄所長
秋山 正子

訪問看護サービスを受けるまでには介護保険の要介護認定が必要。非常に複雑で特にケアマネージャーには悩ましい仕組み。要介護4、5で急にサービス量が増えがちである。

今後、超高齢化社会で亡くなる人は当然増える。病院死が一般化し、急性期医療側でさえそのように考えているケースがある。よって、End of life careをどうするかを急性期病院も含めて早急に検討すべき。質の高いEnd of life careのためには、予防、退院前後の移行期、急性期医療との連携、退院支援・調整、在宅医療・介護ネットワーク、地域ネットワーク、看取りに至るまで、節目節目で医療と介護の一体的な提供の必要がある。

転倒予防などで廃用症候群を生み出している責任の一端は看護職にある。予防としてできるだけ緊急入院しない地域をつくるには、医療へ適切にアクセスできる人を育てることが重要である。退院前後の移行期には高齢者の緊急入院をできるだけ少なくし、入院しても短期間で在宅に戻すことが廃用症候群の予防につながる。退院前の試験外泊時に訪問看護の適応を考慮できないか。中重度者に対する訪問看護については、施設ケアでは限度額の満額を使用しており、在宅では平均6割しか使われていないという現実がある。看取りの医療・介護の連携としては、さまざまな看取りの場面に応じた医療チームの組立方と介護との連携・調整が必要となる。在宅死を受け入れない市民意識の問題もあり、市民への教育も必要である。

新宿区の行政の仕組みの中に、急性期病院の看護師を訪問看護ステーションで教育するという仕組みが効果を上げている。市民公開講座、シンポジウムを契機に在宅連携拠点事業として、高齢化率46.3%の地に「暮らしの保健室」を開設した。この活動の中から、相談支援の場が健康不安の減少、介護予防、医療にアクセスできる人材育成といった、高齢者の予防活動に対して示唆ある材料が見えてきている。


日本介護支援専門員協会会長 木村隆次

医療・介護の連携と機能分担

日本介護支援専門員協会 会長
木村 骼

医療・介護保険の現場では、入退院、転院、在宅など住まい場所が変更になったときの情報共有ができていない、退院後に医療・介護サービスが途切れる、国民の介護サービス利用に対する誤解など様々な問題がある。
国民が安心して住み慣れた地域で暮らすことができるためには、次のようなことを今回のダブル改定で考えなければならない。

  • シームレスな医療介護連携(情報共有)
  • 入退院、入退所時のサービス調整
  • 住まいと利用者・患者状態像のマッチング
  • どこにいても必要な医療サービスが提供できるように、給付調整および仕組みの変更
  • ケアマネジメントの重要性と社会保障費の適正化

情報共有については、一堂に会してのカンファレンスを行う仕組みの強化、会えない場合はICT等の活用が必要。安心で安全、シームレスな医療提供体制の確保のためには医師を中心とした医療チームの姿があり、病院から地域に帰る窓口にケアマネージャーがいる。情報がスムーズに行き来したら患者・利用者はそれぞれ医療・介護保険適用で安心でき、また財源の無駄も省ける。

入院の際、ケアマネージャーは医療関連職種と早期から連携し、介護支援連携指導料を介してケアプランによって患者を支える。退院時も担当医が、在宅の医師、看護師、歯科医、薬剤師、ケアマネージャー等のうち3 者以上と共同して退院指導を行えば2,000点加算となる。特に在宅医療主治医とケアマネージャーの情報共有を強化するべき。医療保険と介護保険のつなぎの部分で問題となるのは、要介護申請と認定の間のサービス提供の隙間で、この間にリハ等が途切れた場合、生活機能が落ちて重度化し、再入院となれば医療・介護給付費が増大する。退院時カンファレンスで必要と認められたサービスは期間限定で導入できる仕組みが必要と考える。

老人保健施設の薬剤供給については、どこにいても必要な医療サービスができる給付調整および仕組みの変更が必要。適正なケアマネジメントにより、薬の飲み残しを減らせば相当額の社会保障費の削減が可能になる。必要な人に必要なサービスを過不足なく提供することが社会保障費の適正な負担につながる。


淑徳大学総合福祉学部准教授 結城康博

2012年診療報酬と介護報酬の同時改定にあたって

淑徳大学 総合福祉学部 准教授
結城 康博

今回の報酬改定は、社会保障・税一体改革が前提で、その前哨戦と理解している。ただし、この成案が国民的理解が得られるかという不安もある。また同時改定だからといって抜本的に良くなるかには慎重さが必要で、報酬とサービス供給量が一致して初めて連携は可能。特に介護の分野で適切な看護師配置がなされない限り、今回の制度改革は絵に描いた餅になるという危惧がある。

7対1の看護師配置基準による看護師の争奪戦はいまだ繰り広げられていて、特に、介護の現場では看護師不足が否めない。15対1の配置基準がどうなるか、今回の改定では注視したい。在院日数90日超の議論でも、看護師を手厚くする医療報酬改定がなされると、やはり介護分野から看護師がスカウトされる可能性がある。今回の改正介護保険法を成功させるには、ある程度の看護師が介護分野に配分される必要がある。中小病院は地域医療の核となっており、急性期病院では難しい高齢者の短期入院などの側面で融通が利く。この中小病院が担う在宅医療・介護分野の機能の一部減退についても懸念している。夜勤72時間ルールの免除についても大きなポイントとなるだろう。

また、訪問看護サービスが適切でなければ、厚労省が考える介護保険の地域包括ケアはあり得ない。看護師の数は限られているので、そこを同時改定でどう対処するかも重要である。
新しい地域区分の財政方式案は、まず介護報酬全体の水準を0.6%引き下げてから地区によって配分していこうとしている。それでは、「その他」地域がマイナス0.6%になってしまう。そしてデイサービスについても注目したい。
繰り返すが、2012年の介護報酬改定は看護師の配置が大きなポイントで、24時間巡回型訪問介護看護、複合型サービス事業所など、介護と看護の連携においては重要な転換期を迎える改正である。

また、介護士と看護師の円滑な人間関係というものが今回の改定により重視されるだろう。24時間巡回型訪問介護看護については、地方のニーズ、高齢者の意識も含め、ここでも看護師がキーパーソンとなる。
なお、サービス付き高齢者住宅も切り札のひとつだが、ここでは1階部分に訪問看護ステーションが参入するのではないか。また、小規模多機能型居宅介護も目玉といわれるが、診療報酬の算定や看護師配置基準を見極めたい。

開催趣意

平成24年度は診療報酬と介護報酬の同時改定が行われる年度であり関係者の関心が集まっている。同時改定の意味するところが診療報酬と介護報酬の整合性を図るだけであれば、リハビリテーションや訪問看護など医療と介護の両方で行われているサービスの報酬体系を整理するだけですむ。しかしこれだけの関心を集めている理由は同時改定を契機に医療と介護の連携と機能分担のありかたを改めて検討しようという動きがあるためである。厚生労働省社会保障検討本部の医療・介護チームは検討事項として診療報酬・介護報酬同時改定の基本となる方針を策定し、それと整合的な医療および介護の提供体制の改革案を作成することを挙げている。そこには病院・病床機能、介護施設機能、医療・介護計画、療養病床の再編、急性期から慢性期への円滑な移行、在宅医療・介護の充実、プライマリケアの明確化など様々な課題が含まれる。本シンポジウムが開催される時期は同時改定に向けて社会保障審議会医療部会、同医療保険部会、同介護費給付部会、中央社会保険医療協議会など関係審議会で活発な議論が行われている最中であるが、シンポジウムでも同時改定の向こうに映る医療・介護の連携と機能分担のありかたについてシンポジストの皆様と考えていきたい。