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シンポジウム

医研シンポジウム2016 地域医療構想をめぐって
─地域医療・その実情と課題─
 

シンポジウムのようす今年6月に発表された平成27年国勢調査速報によると、65歳以上人口は総人口の26.7%で、5年前の23.0%から大幅に上昇しています。高齢化への対応は日本社会の大きな課題となっています。
その課題の一つが医療提供体制の整備です。医療・介護は高齢になるほど需要が高まるので、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる2025年までに体制整備の道筋をつける必要があり、現在、都道府県は地域医療構想を策定しています。
また、その構想が求める変化に地域の医療機関がどのように対応していくかも大きな課題となります。
今回の医研シンポジウムは、自治体担当者および医療関係者が直面している課題対応へのヒントを導き出すことを目的に、双方からの取り組んでいる実情をご紹介いただきました。平日の開催にもかかわらず全国から大勢の方にご参加いただきましたが、それぞれの立場におられる方々にとって、鮮度の高い貴重な情報を共有できたのではないかと思います。
事務局編集による座長趣旨説明、基調講演および各パネリスト報告の抄録は次の通りです。

※講演録は、機関誌『医療と社会』(Vol26,No.3, 2016年11月発刊)に掲載しています。

開催概要

日 時
2016年9月16日(金)
会 場
全社協・灘尾ホール
東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビルLB階
主 催
公益財団法人 医療科学研究所
後 援
厚生労働省

プログラム

開会挨拶 公益財団法人 医療科学研究所 理事長 江利川 毅
来賓挨拶 厚生労働省 医政局長 神田 裕二
座長趣旨説明 学習院大学経済学部教授/
公益財団法人医療科学研究所理事
遠藤 久夫
基調講演 厚生労働省 医政局地域医療計画課長 佐々木 健
自治体担当者実情報告 東京都 福祉保健局 医療政策担当部長 矢澤 知子
青森県 健康福祉部長 一戸 和成
高知県 健康政策部 医療政策課長 川内 敦文
医療関係者実情報告 日本慢性期医療協会 副会長 池端 幸彦
全日本病院協会 副会長 神野 正博
パネルディスカッション    
開会挨拶 公益財団法人 医療科学研究所 専務理事 戸田 健二

(敬称略)

座長趣旨説明

遠藤 久夫氏の写真

学習院大学 経済学部教授
公益財団法人 医療科学研究所 理事
遠藤 久夫

地域医療構想は都道府県が策定する医療計画の一環であるが、これまでの医療計画とはことなり、病床の機能を4種類に分類して、その地域の将来の医療ニーズに対応できるように、機能別に病床を再編する、という新しい試みである。これは一般病床の機能を細分化するだけでなく、療養病床に代表される慢性期の病床の再編と在宅医療の推進を一体的に進めることも求めている。その意味で、地域医療構想は、一般病床の機能別再編計画という意味だけでなく、在宅医療や地域包括ケアというコンセプトと深く関連する政策でもある。

病床の再編方法は医療機関の自主的な取り組みを基本とするが、都道府県が音頭をとって調整会議を設け、病床再編の青写真である地域医療構想を作成する。さらに、都道府県は、地域医療構想の実現のため「地域医療介護総合確保基金」を活用し、自主的調整が十分でない場合には、医療機関に対して「要請」や「指示」を出すこともできる。その意味では、都道府県の役割がこれまで以上に重要になってくる。

本シンポジウムでは、まず基調講演として、厚生労働省の担当課長から制度の背景や枠組みについて講演いただく。続いて、3名の自治体担当者からそれぞれの地域医療構想を報告していただき、実現に向けての課題などについて議論する。地域ごとに固有の課題や対応方法が異なるのが地域医療構想の特徴である。そこで今回は、東京都、青森県、高知県という、タイプの異なる3つの自治体の取り組みを紹介する。東京都は、医師は非常に充足しており、高度急性期病床も豊富であるが、一方慢性期病床は不足している。そのため、高度医療を必要とする患者の流入、長期療養を必要とする患者の流出という特徴がある。また、今後急速に高齢化が進み、将来の必要病床数が現状を上回るという全国でも数少ない地域である。青森県は、東北地方に共通する医師不足という制約が大きい。特徴的なのは市町村立病院を中心に国公立病院数が全体の約4割を占める点である。このことは、病床再編においてどのような意味をもつのか興味深い。高知県は、人口当たりの病床数、医師数はトップレベルで、1人当たり医療費も日本一高い。一方で、林野の面積が広いため、都市部への集中という県内での住民、医師、医療機関の偏在が顕著なのも特徴である。療養病床数が非常に多いことから、在宅医療の推進も求められている。

これらの自治体の報告に続いて、地域医療構想を見据えた慢性期医療の在り方という視点から、日本慢性期医療協会副会長の池端先生に、そして、病床再編によって、様々な影響を受けると予想され、その動向も注目される民間病院の立場から、全日本病院協会副会長の神野先生に、それぞれご発言いただく。現在進行形のテーマであるだけに、私自身も皆さんと一緒に勉強したいという思いがある。

基調講演

佐々木 健氏の写真

地域医療構想について

厚生労働省医政局 地域医療計画課長
佐々木 健

日本の人口は今後、高齢者の割合が増加し、生産年齢人口が減少していく。都道府県別に見ると、大都市ほど高齢者が増加する傾向にある。団塊世代が75歳に達する2025年に医療・介護需要が最大化するのに備え、急性期から回復期、慢性期まで、患者が病状に見合った病床で、状態にふさわしい、より良質な医療サービスが受けられる体制を整えることが必要となる。

そんななか地域医療構想は、各都道府県により設定され、平成28年度中には策定が完了する予定である。2025年の医療需要と病床の必要量を見据えながら、地域で議論しながら収斂することになる。医療機能の分化・連携を実効的に推進するにあたっては、診療報酬と地域医療介護総合確保基金によってフォローアップしていく。また、協議の場(調整会議)を設けるとともに、必要に応じて都道府県レベルで法的権限を行使していただく。

今後の高齢化により、医療機能別必要病床数は地域で格差が生じ、都市部で不足、それ以外では過剰となることが予測される。また、2025年には在宅医療等で対応する追加的な患者数は約30万人と推計される。

地域医療構想の策定は、各都道府県で議論の体制を整備し、データを共有・分析。構想区域を設定し、その区域ごとに医療需要を推計。供給体制を検討してとりまとめるプロセスとなる。課題抽出にあたっては、NDBデータ、DPCデータなどを活用していただいている。進捗状況は、平成28年7月31日現在で、19の都府県が既に策定済みとなっている。

都道府県はその構想区域ごとに地域医療構想調整会議を開催する。構想実現に向けた具体的なツールのひとつが地域医療介護総合確保基金で、その内訳は、①地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設又は設備の整備、②居宅等における医療の提供、③医療従事者の確保、という3つの事項に分類される。

都道府県においては、①病院の新規開設・増床への対応、②既存医療機関による医療機能の転換への対応、③稼働していない病床の削減の要請、といった措置を講ずることができる。要請または命令・支持に従わない場合は、医療機関名の公表、地域医療支援病院の不承認・承認の取消しも可能である。

急性期から回復期へ病床転換を図ることは課題のひとつだが、地域医療介護総合確保基金を活用した補助での誘導が期待される。医療従事者の需給・養成数および偏在対策については検討会を開催し、取り組みを進めている。また、慢性期の医療ニーズに対応する医療・介護サービスの確保については基金を活用した在宅医療・介護施設等の整備を、ニーズに対応できる提供体制についても見直しを検討している。直近のターゲットとなるのは、平成30年度の診療報酬と介護報酬の同時改定、そして平成30年4月から開始される医療計画・介護保険事業計画。国の指針にも医療計画における地域医療構想の位置づけについて盛り込む方向で進めているところだ。

自治体担当者実情報告1

矢澤 知子氏の写真

東京都地域医療構想

東京都 福祉保健局 医療政策担当部長
矢澤 知子

東京都の地域医療構想は、5章構成。①地域医療構想とは、②東京の現状と平成37年(2025年)の姿、③構想区域、④東京の将来の医療〜グランドデザイン〜、⑤果たすべき役割と東京都保健医療計画の取組状況。

都民の皆様に東京に住んでいてよかったと感じていただけるよう知恵を絞り3つの特徴を持つ地域医療構想を策定した。1つめは、東京都の地域医療構想は、都民、行政、医療機関、保険者など、医療・介護・福祉等に携わるすべての人が協力して実現するものである、ということで、最初にこれを宣言した。2つめの特徴は2025年に向けたグランドデザインとその実現に向けた4つの基本目標(後述)を設定したこと。3つめは、医療が地域包括ケアシステムを下支えしていくという理念のもとに構想を策定したことだ。

第1章は、東京都における策定の考え方、策定プロセスなどについて記載した。

第2章には、東京の現状と、平成37年に推測される姿を記載した。

東京都には、高度な医療施設や教育施設が集積しており、民間病院が多く、約七割が200床未満の病院である。また、交通網の発達、人口密度と昼夜間人口比率が高い、高齢者人口の急激な増加、中でも高齢者の単独世帯が多いといった特性がある。さらに人口密集地だけでなく、郊外、山間部、へき地などがあり、様々な地域特性を併せ持っている。

2025年の患者の受療動向は、高度急性期、急性期、回復期は他県を含め都の中心部に移動するが、慢性期では多摩地域や隣接他県に移動する傾向にある。疾患別に分析すると、がんの患者は同様の受療動向である一方、高齢者に多い急性心筋梗塞や脳卒中などの患者は自圏域又は隣接圏域に入院していることがわかった。また、75歳以上の自圏域完結率は高度急性期〜回復期では圧倒的に大きいが、慢性期は低く、住まいの近くで病床が確保しにくい状況にある。これら分析を踏まえ、地域に必要な医療をきめ細かく確保する必要があるとした。

第3章は、構想区域に関する事項を記載した。

構想区域は「病床整備区域」と呼称し、13に区分した。

例として、区南部(品川区・大田区)を紹介する。本区域の高度急性期の自構想区域完結率は73.6%で、都内隣接区域を合わせると約90%。しかし慢性期になると、区西南部や神奈川などへの流出が目立ち、完結率は50%を下回る。

構想区域ごとの意見聴取で頂戴したご意見等は、なるべくその通り記載した。

また東京都では、これまで培われてきた医療連携体制を基盤として、患者の受療動向や医療資源の分布状況に応じた事業推進区域(疾病・事業ごとに医療連携を推進する区域)という概念を新たに設け、柔軟に運用することとした。

第4章には、グランドデザインと、4つの基本目標すなわち①高度医療・先進的な医療提供体制の将来にわたる進展、②東京の特性を生かした切れ目のない医療連携システムの構築、③地域包括ケアシステムにおける治し、支える医療の充実、④安心して暮らせる東京を築く人材の確保・育成を掲げ、目標の達成に向けた重点課題を挙げ、今後10年間の取り組みの方向性を記載した。

今回、地域医療構想を策定したことで新たに生じた、都民や医療機関、保険者などの役割、そして保健医療計画に追記すべきことは、第5章に4つの基本目標とリンクさせて記載した。

自治体担当者実情報告2

一戸 和成氏の写真

「地域医療構想」をめぐって
〜地域医療・その実情と課題〜

青森県 健康福祉部長
一戸 和成

青森県の人口は130万人を切っており、毎年1万人ペースで人口減少が進み、少子高齢化も加速している。医療の状況を見ると、絶対的な医師不足地域であるにもかかわらず、病院数一般病床数が多いのが特徴。医療を支える病院は自治体病院が多い。医療従事者数は増えてはいるが、全国と比較すると伸び率は低く、絶対数の格差は広がり続けている。また、平均年齢は50歳を超えており、開業医であれば60歳を超えているのが実情である。

有床診療所が多いのも青森県の特徴である。医師が少ないために病床利用率が低く、平均在院日数も長い。非稼働の許可病床は1,000床を超えている。自治体病院への依存率が大きいが、その経営状況はあまり芳しくない。県内の自治体の財政力も弱まるなか、自治体病院を維持することが適当なのかということが、地域医療構想を策定するうえでの大きな議論の的となる。

施策としては、自治体病院の機能再編成の推進が最重要課題であり、在宅医療と介護の充実、へき地等医療の充実などが挙げられる。在宅医療をどこまで推進するかという議論をしたが、絶対数の少ない医師による訪問診療はきわめて非効率であり、東京都のような都市と同じように在宅医療を提供するのは難しいという結論に至った。

青森県は6つの構想区域からなる。津軽地域には大学病院があるが、200〜300床の中小規模の病院が限界に達しつつあり、中核病院の整備が必要。八戸地区は500床規模の病院が併存しており、機能分化が望ましい。西北五地域は慢性期病床が介護療養病床として主に存在している。上十三地域は広大であるが周産期センターがなく、周産期医療の充実が必要。このように地域ごとに施策を打ち立て、調整会議を進めていく。

西北五地域は、地域医療再生計画により自治体病院の機能再編成が既に完了している。5つの病院を1つの総合病院と4つのサテライト診療所に再編したが、今後は他地域においてもこのような再編を県がお願いしていくことになる。また、有床診療所を含めたすべての病床を有する医療機関に対して、書面により病床の有効活用のため、将来的に使用する見込みのない病床の返還の検討を促している。これら施策により構想上推計した必要病床までの削減の見込みがある程度立つので、その上で在宅医療の充実などを図っていく。平成37年の在宅医療需要は約1.5倍となる見込みであり、地域を支える地域・医療・福祉一体化システムの構築が必要だ。町村部の在宅医療では、ICTを活用した遠隔医療や移動手段の確保といった施策と連携した医療提供をモデル事業として取り組んでいる。買い物や見守りから地域経営なども含め、立体的に考えていきたい。在宅医療成功のためには、介護や社会福祉法人の受け皿を強化することも必要である。

自治体担当者実情報告3

川内 敦文氏の写真

高知県の地域医療構想について

高知県 健康政策部 医療政策課長
川内 敦文

高知県の一般病床数は全国1位で平均の倍以上、療養病床数にいたっては約3.5倍。医師数は4位だが、看護師数は1位、医療費も1位といいことづくめのように見えるが、さまざまな課題を抱えている。

4つの二次医療圏のうち中央保健医療圏の人口がもっとも多く、医師の8割強がここに集中している。その両側に位置する医療圏とは10倍ほども人口がちがう。また、西南部の幡多保健医療圏は独立していて、ここからの患者流出はほとんど見られない。後期高齢者の入院患者数は2030年にピークを迎え、以降は減少に、全年齢で見ると郡部では既に減少局面に入っている。

地域医療構想については、医療機関の自主的取り組みが基本であり、県全体の方向性を示すに留めている。また、「必要病床数=削減目標」ではないことを明記している。医療難民・介護難民が出ないようにソフトランディングしていきたい。

高知県地域医療構想の特徴は、区域ごとの構想を県全体構想に包含していること、構想区域の一部に「サブ区域」を設定(中央区域に4つのサブ区域)していることが挙げられる。また、慢性期には「〜床以上」と幅を持たせた。病床に係る調整は、各区域の調整会議だけではなく、全体の連合会で協議していくこととした。高度な医療はより広範な体制で支えるが、保険者は必要に応じて行政にデータを提供するよう努めることを明記している。

目前に迫った平成30年度の療養病床制度の見直しを注視し、基金を活用した病床転換の支援を行っていく。在宅医療の充実については、少なくとも訪問看護サービスが行き渡るようにする。これまでの中山間地域等訪問看護サービス確保対策事業により、1ヶ月の訪問回数は平成26年度で前年比24%増、27年度は55%増となった実績がある。後期高齢者の訪問看護件数は、過去3年間で中央の高知市・南国市は4.1%増だったのに対し、これら以外の地域では31.7%増であった。

医療従事者の確保・養成については、高知医療再生機構による若手医師のキャリア形成支援などにより徐々に増加に転じている。今後の病床転換の進展を踏まえると雇用の確保という観点でも課題を捉える必要がある。

今後、地域医療構想を進めて行くにあたっては、急激な転換で患者の行き場がなくならないよう経過措置等が必要。転換にあたっては既存病床のインフラを活用していくこと、また、患者の経済的負担が変わらないことが重要である。在宅療養に向けては、ICTを活用して医療従事者と事業者が情報を共有するシステムを構築している。こうした様々な取り組みにより、バランスのとれた医療を提供できるよう少しずつ体制を整えていきたいと考えている。

医療関係者実情報告1

池端 幸彦氏の写真

地域医療・その実情と課題〜慢性期医療・在宅医療の立場から〜

日本慢性期医療協会 副会長
福井県医師会 副会長
医療法人 池慶会池端病院 理事長・院長
池端 幸彦

日本は将来、「治し、支える医療」の提供が必要となる。従来の「治すこと、救うこと」は急性期医療に、「治し、支える医療」は包括的医療や在宅医療に該当するだろう。地域包括ケアの最終目的には、本人・家族の覚悟がある。つまりQOLではなく、QOD(Quality Of Death)が求められるのではないか。地域医療構想を策定するうえで、これは重要なことだと考える。

医療の立場から、地域医療構想は急性期の地域マーケティングと捉えている。在宅医療に対する自院の経営戦略、医療資源の適正配置の2点が必要。慢性期病床と在宅医療の患者数を決めるためのマーケティングが構想の基本。慢性期機能および在宅医療には「ときどき入院、ほとんど在宅」と「ときどき在宅、ほとんど入院」のケースがある。それを各地域がどう捉えるか。一般病床の一部、老健(在宅復帰型、特老型)まで含めて考えていく必要があるだろう。

在宅ケアの必要条件は、不安なときはいつでも相談できて、必要なときに必要なだけの医療を提供できる医師がいてくれること、そして、いつでも必要なとき、必要な期間、入院できるベッドがあることだ。病院の入院機能と在宅医療が補完し合い、「ときどき入院、ほぼ在宅」で在宅限界をいかに高めるかが重要だ。

これまでの医療の流れは、急性期/慢性期/介護・在宅期。これからは、急性期(高度急性期、広域急性期)/回復期(地域急性期、地域包括ケア、回復期)/慢性期(慢性期、介護・在宅期)とするのが適当で、私見ではあるが回復期は「地域包括期」と呼んでもいいのではないか。

地域医療構想に影響を及ぼすものに、三大要素(人口動態推計、病床機能分化、患者の受療行動)と2係数(診療報酬改定の動向と対応、地域医療構想調整会議)がある。調整会議には公的な会議だけでなく、本音で語る私的な懇談会も必要だろう。

福井県の2025年の病床数推計結果は、約2,000床減である。福井県は福井・坂井医療圏に高度急性期病院が集中しているため、急性期、回復期では患者の流入・流出を踏まえた調整が必要。医師会と行政との役割も重要だ。

福井県では「退院支援ルール」を策定することでケアマネジャーと高度急性期病院の連携が一気に進んだ。更に高度急性期病院同士の連携のために各病院連携室の連絡協議会を設け、機能し始めている。また、「ふくいメディカルネット」による医療機関の役割分担と連携も進み、患者登録数も増えている。

医療からみた7つのパラダイムシフトとして、①治し救う医療から、治し支える医療へ、②出来高から包括化へ、③病院から在宅へ、施設から地域へ(しかし「在宅医療は安上がり」は幻想)、④病院完結型医療から地域完結型医療へ、⑤ストラクチャー・プロセスからアウトカムの時代へ、⑥競合より協調、⑦社会福祉法人、医療法人、営利法人がどう生き残るか、をあげておきたい。

これからの医療介護福祉において、地域包括ケアと地域医療構想は車の両輪であり、更に医療・介護における多職種連携や医師会と行政の連携は、非常に重要な要素になるであろう。

医療関係者実情報告2

神野 正博氏の写真

地域医療その実情と課題〜石川県の場合〜

全日本病院協会 副会長
社会医療法人財団 董仙会恵寿総合病院 理事長
神野 正博

まず全日本病院協会は中小病院が多く、約2,500病院のうち25.9%が老人保健施設を併設しており、医療・介護・福祉を提供している病院が多いのが特徴だ。

2025年の高齢者人口はメガポリスで増加することが問題視されている。都市部は土地が高いので在宅医療ということかもしれないが、へき地で人口密度も少ない「田舎」がその流れに引っ張られる必要はない。雪国の場合なら除雪費などがかかることもある。そういった意味で集住が必要だ。医療・介護政策の潮流が「2025年の姿」に収束するとすれば、すべてが同じ方向に向かっていると考えれば理解しやすいだろう。

高齢化の進展とともに医療需要は、2013年の134.7万床が、2025年に152万床程度と推計されるが、その差約30万人は在宅医療等で追加的に対応するという。全国の減った病床数と、介護施設や高齢者住宅を含めた在宅医療の数を足すと、増減はほとんどないことをデータは示している。これを現場がどう捉え、対応していくかが課題である。

慢性期の医療・介護ニーズに対応するためのサービスモデルには、医療を外から提供する、居住スペースと医療機関の併設の案がある。(病院という名前にはならないかもしれないが)病院の中に家があって、ドクターが行けば訪問診療、ナースが行けば訪問看護となる。そういった意味で明朗会計かもしれない。

石川県の2025年の必要病床数は、高度急性期、急性期、回復期で12.5%減だが、これは稼働率を加味して対応する必要がある。また、昭和56年の建築基準法改正前にできた病院が立て替えを断念した場合、さらに病床は減る可能性がある。一方、慢性期病床の推計は数値上では41%減だが、先のような新たな施設類型を確保できればそれほど大きな話にはならないと考える。石川県の地域医療構想の協議の場では、病床削減の話ではなく、まず病院の受け皿である在宅医療をどうするか真剣に話し合おうという進め方をしている。

厚生労働省の描く地域包括ケアシステムの姿は、中学校区単位を想定しているが、病院は数多くの校区を抱えている。また、生活支援・介護予防は自治会やボランティアなどとされるが、例えば深夜の徘徊老人に対するこれらによる支援は困難だろう。入院医療や介護まで含む地域包括ケアシステムの範囲は、まさに地域医療構想区域そのものだ。生活支援・介護予防において病院や生活支援企業が担える部分も大きい。様々な提携先を含め、すべてを統合して、地域包括“ヘルスケア”システムとして推進していくことが望ましい。

当病院では“「生きる」を応援する”と謳い、医療や介護だけでなく、生活や人生まで含め同列に捉え、一元管理をできるシステムを構築している。ヘルスケアシステムにおいては、電子カルテなどの情報、SPDやセントラルキッチンなどのサポートという、いわば土台の部分を特に重要視している。

パネルディスカッション

パネルディスカッションのようす パネルディスカッションは、遠藤座長の下、基調講演を行った佐々木医政局地域医療計画課長、実情報告を行った自治体担当者3名と医療関係者2名によって進められました。すべてのパネリストに対する座長からの質問は、地域医療構想策定までのフレームワークや地域ごとの課題、困難を伴った点などで、それぞれの立場からの発言とともに、報告では触れられなかった課題も多く出されました。会場の参加者からは、在宅医療の充実や人材確保への資金面の問題など、主として医療関係者から国に向けての質問が多く寄せられました。現在進行形のテーマなので、多くの方々にとって、貴重な情報を得る場となったのではないかと確信しています。